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写真で何ができるだろう?写真でしかできないことは何だろう?What can we do through photography? What is possible only through photography?

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第5回 写真新世紀展1996 公開審査会開催報告

公開審査会 1996年12月7日(土)

東京・四ツ谷、東長寺講堂・P3、「第5回写真新世紀展」会場にて、1996年度年間グランプリを決定する公開審査会が行われました。審査員は、荒木経惟氏、南條史生氏、飯沢耕太郎氏3名とゲスト審査員の伊島薫氏によるもので、第13回、第14回公募優秀賞受賞者よりグランプリには野口里佳さんが選ばれました。熱気と緊張にあふれる会場になりました。

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公募の審査にあたって

第5回 写真新世紀展1996 公開審査会は第13回・第14回公募作品を対象としています。

第13回 審査総評

荒木 経惟 Nobuyoshi Araki

今回の応募作品の中でも日常の写真を撮ってる人は多いけれど、質感のある人生が表現されているのは、僕が選んだ菅野さんだけだね。やっぱり写真家は、写真がうまいってことより、人生に味わいがないとな。でも、菅野さんの写真は、男っぽいよね。写真は女で男性性をもっている奴と、男で女性性をもっている奴のがいいんだよ。俺なんか女っぽいだろ(笑)?最近思うのは、写真は枚数がなきゃだめだってことだね。時や空間って、小部分なんだよ。部分よりもっと小さい部分なの。写真は、そのちっちゃい部分を重ねることによって、大きな何かになるんだよ。

飯沢 耕太郎 Kotaro Iizawa

今回ははっきり言ってかなり疲れた。数が多かったせいもあるが、生煮えの料理を食べさせられているような中途半端さが、多くの作品につきまとっていた。「見せ方」のレベルは、確かに数年前と比べると相当に上がっているのだが、反面何をやってもいいんだという抑制の無さが、緊張感を欠いた表現のたれ流しにつながっているような気がしてならない。特に日記やアルバム仕立ての作品は、批評的な視点を強く打ち出さないと、見せられる方としては辛いものがある。ただ、優秀賞に選ばれた4人は、それぞれ自分の世界を強く打ち出していて見ごたえがあった。

南條 史生 Fumio Nanjo

何度も書いたが、やはり今まで見たことがないようなものが見たい。しかし、それはプレゼンテーションの仕方だけでは十分ではない。やはり主題やそれを切り取る目に基礎があるべきだと思う。その「内容」が見せ方としてのプレゼンテーションとうまく融合しているとき、良い作品になる。では、そのユニークな内容とは何から来るかというと、そこに作者の持つ独自の個性がなければならないということだろう。一体何を訴えたいのかわからない作品が実は多い。そうしたものは、やはりユニークとは言えない。個性が何からでてくるかというと、才能か豊かな人生経験からだろう。個性は「こだわり」であり、「のめり込み」であり、「拘泥」であり、どうしようもない「自分の道」である。それは何かということをいつも自分に問い直してほしい。

伊島 薫 Kaoru Izima

近来ないコンテストだね。ほとんど傾向がない。ヘンなのが、いろいろあって楽しいね。ちょっと寂しいのは、俗に言うストレートでいいのがないこと。あと、点数の少ないのは、世界が伝わりにくいよな。最近、おもしろくないものをやればアートだって言う傾向があるけれど、本当に撮りたいもの撮ってないと、こっちに伝わってこないよね。写真の形式にはこだわらず、撮っている時の生理とか、生の感情、スケベが伝わってくるようなのがもっと見たいなぁ。でもとにかく、写真をパフォーマンスと解してるのが、いっぱいあって良かったね。今回はカラーが少なかったから、次はカラーででかいのを選ぶぞっ、なんて傾向と対策言ったりして。まぁ、裏切るんだけど。

第14回 審査総評

荒木 経惟 Nobuyoshi Araki

益々アルバムスタイルが増えてきているのは、作品制作という行為そのものが個人的になって来ている証拠かな。写真を撮るという段階からそれを作品として完結する経過も、その結果としての作品も常に、“自分のもの”にしておく・・・他人に見せるにしても気のあった仲間うちだけで見せ合うというレベルのものが多いような印象を受けるね。しかも写されているものが“ゲーム”のような感覚で、現実ではない“ウソ”を“演じている”訳で・・・。
“空”とか、“虚“の表情をしているのが“流行”(ハヤリ)のような風潮があるけど、それって“実”がある時に意味があるんだよ。被写体と真正面から対することもなく、流れてしまう状況をブレたフォーカスで追いかける・・・、なんか違うんじゃないか。今回は断然「写真旧世紀」で行きますよ!

飯沢 耕太郎 Kotaro Iizawa

今回は珍しく男性が優秀賞を独占した。女の子写真家ブームで少し元気がなかった男性が底力を見せたということだろうか。もちろん女性の応募者も頑張っているのだが、やや語り口が似通ってきて、飽きられ始めているのかもしれない。全体のレベルから言えば、今回はそれほど突出した物ではなかった。思いつきで強引に作り上げていくような物だけではなく、じっくり時間をかけて一つのテーマに取り組んでいくような作品も見てみたい。とはいえ、まず面白がることは大事だと思う。観客を突き放すのではなく、巻き込んでいくパワーがほしい。

南條 史生 Fumio Nanjo

全体に多数の写真をまとめたシリーズ物が大半であった。これは審査するには、作家の意図が判り易いということで、歓迎したい。しかしそうなると、全体のコンセプトに矛盾するような要素が作品の意味をぶち壊してしまうケースも出てくるので、その辺には留意して欲しいと思う。作品の傾向は全体に暗い物が多かった。渋く、暗く、あるいはセピアを使ってノスタルジックな雰囲気を漂わせている。それは時代の空気の反映かもしれないが、もう少し、元気な作品があってもいいのではないか。コピーを使用した物も多かった。それはコピーの持つ、荒れた、色むらのある、独特の空気を狙っているのだと思う。それも全体にノスタルジックな印象を与えるもとになっているだろう。ノスタルジックな作品は、嫌いではないが、やはり21世紀を予感させるような物もあっても良いのではないかと思う。次回はそうしたポジティブな作品に期待したい。

椎名 誠 Makoto Shiina

はじめて参加した写真コンテストだが、応募者が若いのに驚いた。女の人が多いのにも二重にびっくりした。写真の世界はいまや完全に新世代(新世紀か)に入っているのだな、ということを実感。ラディカルな組み写真が多いのは審査員の荒木さんの影響だろうか。心情を隠さずうまく表現する人が多いので見応えがあった。男女とも手法としてナルシズムにひたりすぎているのは見ていて少々キモチワルイところがあった。とくに若い男性に「おめーなあ」と言いたくなるものがたくさんあったけれども、それもパワーなのか。屋内私小説ふうのものと、カラーコピーに転写させる「流行り」のようなものを感じたが、これだけその手のものが多いとそれがすなわち安定保守化で鼻につく、というところもあってどうも結局のところ完全ツキヌケという作品は少なかったように思う。でも面白かった。

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