共通基盤技術
ネットワーク環境はさらに進展を加速させています。キヤノンはIT技術を要素別に構造化し、デジタル技術のプラットフォーム化を促進。さまざまな製品で共通利用し、開発のスピードアップと品質向上を実現しています。
カラーマネジメントシステム技術
機器統一高画質カラーを実現
個々の入出力機器は再現可能な色範囲(色域)がそれぞれ異なるため、ディスプレイやプリンターで出力した色味が、元々の入力画像の色味と異なってしまう、という問題がありました。
キヤノンでは、入出力機器において高画質かつ統一性のある色味を再現するための活動を進めてきました。永年蓄積してきた画像計測・評価・シミュレーション技術、画像処理技術をもとに、オリジナルに対し忠実に再現する色や、人が「好ましい」と感じる色の数値化を行い、目標色を「キヤノン統一高画質カラー」色設計指針として設定しました。
また、それらを実現するための設計・評価ツール群を開発し、統合画像設計環境を構築しました。
「キヤノン統一高画質カラー」は現在、ほぼ全ジャンルのキヤノンのイメージング機器に搭載されています。これをさらに発展させ、色の「見え方」に大きくかかわる照明や紙の特性なども考慮した、より正確なカラーマッチングを実現する高精度カラーマネジメントシステム(CMS)技術「Kyuanos」を開発しました。
高精度カラーマネジメントシステム技術 「Kyuanos」
正確なカラーマッチングの実現には、入出力機器や紙の組み合わせごとにプロファイル(色設計データ)が必要になります。従来、このプロファイル作成には膨大な人手と時間を費やしていました。「Kyuanos」では自動プロファイル作成が可能なため、プロフェッショナルの要求精度に対応した高精度カラーマッチングが容易に実現できます。
近年、各入出力機器の色再現範囲が拡大したことで、従来の標準色空間(sRGB)やビット長(8ビット)では正確な色表現が困難になっています。そこで「Kyuanos」では、従来の制限を受けずに各機器の色表現能力を最大限に引き出す方法として、拡張色空間や多ビット化(16ビット、32ビット)などに対応し、鮮やかで階調性に優れた色再現を実現しています。
機器による色再現の違い
また、「Kyuanos」のもう一つの特徴は、異なる照明環境への対応です。「Kyuanos」では、色に対する人間の視覚特性、画像の「見え方」に大きく影響する照明特性(蛍光灯や白熱電球など)や機器の色再現特性など、それぞれのデータを数値化しています。それらのデータを用いて画像変換することにより、異なった照明環境下でも、「色の見えの一致」を可能にしました。
Kyuanosによる見え方の違い
通信ネットワーク技術
デジタル機器のコネクティビティを実現
キヤノンでは、カメラやプリンターなどの入出力機器を簡単にネットワークに接続し、「いつでも、どこでも」利用できる環境を提供するため、通信ネットワーク技術の開発に取組んでいます。
無線通信技術と機器自動接続技術のイメージ例
無線通信技術
無線通信技術は、機器を「いつでも、どこでも」簡単に利用できる高速無線通信の環境を実現します。
キヤノンは、標準無線技術の無線LAN(IEEE802.11g/a/n)をカメラやプリンターなどの製品への組み込みに特化して開発し、通信パフォーマンスの向上、簡単で安全な接続の実現を図っています。この技術は共通プラットフォーム化され、キヤノンの各製品に最適化された上で搭載されています。
また、近距離無線技術や公衆無線技術の開発のほか、自動で無線接続を実現するミドルウェアの開発や標準化にも取り組んでいます。
さらに、カメラやプリンターの新たな活用をめざして、スマートフォンと無線で連携する技術の開発に取り組んでいます。
高速映像通信技術
ネットワーク接続された機器間で映像通信を行う場合、刻々と変化する信号や通信の品質を制御する技術が必要となります。キヤノンの高速映像通信技術は、ハイビジョン映像と高品位なオーディオ信号のネットワーク化を実現し、高精細映像の品質を保持したまま高速伝送できる技術となっています。
さらにキヤノンでは、この技術を利用して、ネットワークを経由した遠隔地間での臨場感ある映像コミュニケーションを実現する開発も行っています。
機器自動接続技術
「接続自動化」の技術には、DLNA※1やディレクトリーサービス※2に代表される規格があります。しかしながら、これらは互換性が少なく、インターネットなどの広域ネットワーク上では、同じ規格の機器同士でも自動接続が困難です。キヤノンはユーザーの不便さを解決するために、入力から出力までさまざまな機器同士のシステム化を進めながら、異なる規格に対応した機器間および広域ネットワーク上の自動接続を可能にする通信ソフトウェアを開発しています。
- ※1 DLNA(Digital Living NetworkAlliance)
家電、モバイル、PCなどの間でデータを相互にやり取りするための標準化を推進する団体、およびガイドライン。 - ※2 ディレクトリーサービス
ネットワークに接続された機器の位置情報などを管理、検索できるネットワーク管理のシステム。
XML技術
データの論理的互換を進める
XMLは、異なる情報システム間で構造化された文書やデータの共有を容易にするための、データの論理互換を実現するフォーマットとして利用されているマークアップ言語※3で、近年、地上波デジタル放送のデータや国土地理院の地図データなど、さらに身近な存在となってきています。キヤノンでは、XMLの課題である製品における処理パフォーマンス向上を実現しながら、先を見すえたXML技術の開発を行っています。
- ※3 マークアップ言語
「タグ」という特定の文字列を埋め込んで文書やデータの意味・構造を記述する。他に、HTMLやSGMLなどがあり、XMLはSGMLから派生。
バイナリXML技術
テキスト形式のXMLを、コンピューターが直接理解できるバイナリ形式で表現する技術です。XMLを小型製品で扱うためには、テキスト形式のXMLに対してデータサイズを1/5以下にし、処理パフォーマンスを5倍以上にするバイナリ化が不可欠です。しかし、バイナリ化の方式は各メーカーによって異なるため、XMLのメリットである相互運用性が失われてしまいます。
キヤノンでは、今後普及が見込まれるW3C※4標準仕様のバイナリXML仕様の策定を推進しています。また、2Dグラフィック記述言語などで使われるXMLデータに最適化された圧縮符号化方式を独自開発し、キヤノンのイメージング機器が最高のXML処理性能を発揮できるよう実用化を進めています。
- ※4 W3C
The World Wide Web Consortiumの略で、WWWで利用される技術の標準化をすすめる団体のこと。
Webアプリケーション技術
地図サービスや写真共有サービスなど多くのサービスが、Webアプリケーション※5として提供されるようになってきました。最新のWebアプリケーションは、「HTML5」という新しいマークアップ言語と「JavaScript」というスクリプト言語※6で記述されます。
キヤノンでは、複合機やデジタルカメラなどの製品にWebアプリケーションをダウンロードし、製品から直接その機能を使えるようにするための、HTML5とJavaScriptに対応した製品組込み型のWebアプリケーション実行エンジンを開発しています。今後は、さらに電子署名や暗号化、ユーザー認証などのセキュリティ機能を強化しながら、機器とインターネットの融合サービスを実現していきます。
- ※5 Webアプリケーション
Webの機能を利用したアプリケーション。ユーザーがリクエストすると、サーバーがコンテンツを生成して提供するしくみになっている。 - ※6 スクリプト言語
プログラムの内容を逐次解釈しながら動作する簡易的なプログラミング言語。
文書概念検索技術
単語の類似性と意図を推測して文書を検索
電子ドキュメントの増加とともに検索のニーズが高まり、その要求される内容はますます多様化しています。キヤノンは、単語と単語の関係を解析する「キーワード・リレーション検索」技術と、業界初となる単語の概念を判断する「概念ベクトル検索※7」技術を開発。さらにこの2つの技術を統合した「文書概念検索」技術を開発しました。
文書概念検索結果のイメージ例
文書概念検索技術では、検索したい質問文を入力すると、文中の複数単語の関係からその質問文の内容を分析し、これと同様の概念を持つ文書を探し出します。この技術を使うと、従来のキーワード検索と比較して、同一の単語が含まれていなくても概念的に近い意味を持つ文書を探し出すことができ、的確な文書を入手する可能性が飛躍的に高まります。
これらの技術は、ネットワーク複合機対応のソフトウェア「imageWARE Document Manager」に搭載され、サーバー上に保存された文書から文脈に合ったものを検索することを可能にしています。
- ※7 概念ベクトル
ベクトルとは大きさ・方向・向きをもった量(方向量)のこと。この場合は単語の概念を数量化し、特徴をとらえてベクトルで表現。ベクトルの類似によって統合的に文書の概念の類似を判断する。
画像検索技術
指定した画像から、類似した画像・シーンを検索
デジタルカメラやデジタルビデオカメラの普及と、ハードディスクやメモリカードの容量の増加により、手軽に画像や動画を撮影し保存することができるようになりました。また一方、保存データの容量や、画像を蓄積するデータベースの容量も増加したことにより、大量の画像から欲しい画像を検索するには手間がかかるようになりました。
キヤノンの画像検索技術は、キーワードを使わずに画像自体の持つ特徴情報を使うことによって、欲しい画像をすばやく的確に検索することが可能です。
類似画像検索技術
キヤノンの類似画像検索技術は、探したい被写体が含まれる画像を画像データベースの中から検索する技術です。
この技術は、画像の中の探したい被写体の部分的な特徴を多数選び出して検索する方式で、データベースの中にある他の画像と照合し、被写体の一部にでも同じ特徴が含まれていれば類似の画像として採用します。そのため、探したい画像全体を鮮明に覚えていなくても、大量のデータベースの中からすばやく的確に画像が検索できます。また、再現性の高い特徴を優先して検索するため、回転・拡大・縮小など元の画像から変形している場合や、元の画像をスキャン・圧縮したことで画質の劣化している場合でも検索結果から漏れることがありません。
更に、検索速度を高速化する為に、特徴として抽出される部分のデータ容量を1/4に軽減し、独自開発のインデックス(索引)技術と合わせ、業界トップレベルの検索速度(同等の動作環境において)を実現しています。
静止画の類似画像検索技術の概念
DRYOS
機器組み込み用、内製リアルタイムOS
キヤノンは、小型機器への組み込み用のリアルタイムOS※8として、「DRYOS」を独自開発しました。DRYOSは、デジタルカメラやデジタルビデオカメラをはじめとした、数多くのキヤノン製品に採用されています。DRYOSの核となるモジュール(カーネル※9モジュール)は、機器のさまざまなニーズやハードウェア資源に応じて、最小16KBから柔軟に構成できるようになっています。現在、10種類以上の組み込み向けCPUに対応し、PC上で動作するOSシミュレーターもサポート、実機を使わない製品開発が可能となっています。
また、ファイルシステムや、インターネット接続をするために必要となる通信ソフトウェア群TCP/IPネットワークスタック※10などのミドルウェア、USBなどに対応するデバイスドライバーも開発され、多様化するデジタル製品のニーズに応えています。このような基本ソフトウェア群を自社開発することにより、ソフトウェアモジュールの再利用や共通利用を促進し、製品の高性能化、高機能化にスピーディに対応しています。
DRYOSのモジュール階層構造
- ※8 リアルタイムOS
処理をリアルタイムで実行するOS。機器に組み込まれて使用されることが多い。 - ※9 カーネル
OSの中核部分。CPU、メモリー、周辺デバイスなどのシステムリソースを管理し、ソフトウェアとハードウェアを効率よく実行するための基本機能を提供する。 - ※10 TCP/IPネットワークスタック
インターネット接続のために使われる通信規約TCP/IPを扱うためのソフトウェア群。
システムLSI 統合設計環境
大規模なシステムLSI を効率よく開発
キヤノンは、製品に必要なハードウェア・ソフトウェアのシステム全体を1チップに搭載した「システムLSI ※11」を自社開発しています。このシステムLSI はわずか数ミリ~数センチ四方の小さなチップですが、内部に非常に大規模なシステムが実装されており、製品の機能を左右する重要な部品です。キヤノンは、システムLSI の自社開発を他社に先駆けて1990年代から取り組み、DIGICやiRコントローラー、L-COAなどを各製品向けに開発、製品の小型化と高機能化を実現しました。
複数機能を集約したLSI の開発には、多数の技術者との協調や効率的な開発環境が必要です。キヤノンは高効率な「システムLSI 統合設計環境」を独自開発、仕様検討から物理設計まで全工程を総合的に行っています。
システムLSI 開発の全体像
- ※11 システムLSI
CPU、メモリー、専用LSI などで実現していた機能を1個のチップ上に集積した大規模集積回路のこと。システムLSI では、複数のチップを使用する場合のような配線が必要なくなるので動作が高速化する。また、1チップなので基板上の専有面積が小さくなり、基板の小型化、機器の小型化もできるようになる。
設計支援環境
LSI の設計支援として、独自開発の設計支援ツール「MayDay」を開発しました。MayDayは理解しやすいWebベースのツールで、数百名規模のチーム各人の意思疎通と作業進捗をサポートします。また、MayDayを構成する「コンピュートファーム」では多数のCPUやツールのライセンスを管理、要求に応じて最適な計算サーバーとライセンスを提供、ツールを自動実行します。
「構成管理」では、コンパイルやシミュレーションに必要なファイルとディレクトリー全体の成果物を管理し、設計資産を容易に再利用できます。
プロジェクト管理環境
プロジェクト管理環境では、設計者やプロジェクトリーダーなどを対象としています。「障害管理」では、開発フローとリンクしながら各プロジェクトでバグの情報を共有し、複合的な条件検索と追跡ができます。「IP※12サポートシステム」では、複数の製品で共有できる機能をプログラム(IPコア)としてデータベースに登録。IPコアの再利用を促進することでサポート工数を低減し、開発期間を短縮します。
- ※12 IP:Intellectual Propertyの略。
インプロセス可視化技術
機器の動作メカニズムを解析
インプロセス可視化技術とは、製品の動作プロセスを直接観察(光学観察)し、製品の動作メカニズムを明確にする技術です。この技術はキヤノン製品のトナーの現像・定着プロセスやインクの吐出プロセスの解明に役立てられ、製品設計や技術革新に貢献してきました。
レーザープリンターや複合機のトナー1個の直径は数μm※13、インクジェットプリンターのインク液滴は1滴1pl ※14と極めて微細であると同時に、非常に高速な運動であるため、その現象を正確にとらえるのは極めて困難です。また、いずれも製品内部の非常に奥深くて狭い部分で生じる現象であるため、覗くことすら難しいのです。サンプルや装置の製作、超高速度カメラでの撮影、画像解析など、現象観察には高度な技術が応用されています。
- ※13 μm(マイクロメートル):1μmは1mの100万分の1。
- ※14 pl (ピコリットル):1pl は1リットルの1兆分の1。
トナーの現像プロセスの可視化
トナーが感光ドラムに向かって飛ぶ様子を可視化する技術です。わずかなすき間を飛ぶトナーの動きと規則性を分析、機構配置や最適制御電圧などを解明しています。
トナー現像プロセスのインプロセス可視化技術の概念図
トナーの現像プロセスの可視化
トナーの定着プロセスの可視化
定着部材によるトナー溶融→広がり→再固化を観察装置でとらえます。温度、圧力、変位を測定した力学的なデータと統合してシミュレーションを行い、定着機構の部材開発やトナーの特性解明に役立てています。
インク液滴吐出プロセスの可視化
インク液滴吐出プロセスは、吐出から紙へ着地するまで1万分の1秒以下と超高速のため、キヤノンは光の波長に迫る空間分解能と100万分の1秒レベルの時間分解能の解析技術を開発しています。
シミュレーション技術
現象を分析して製品性能を予測
製品開発段階で、製品内で起きる現象を分析したり、製品の性能を予測するシミュレーション技術は、技術研究や新製品開発期間の短縮に役立っています。
電子写真プロセスのシミュレーション
レーザープリンターや複合機の電子写真プロセスは、帯電、露光、潜像、現像、転写、定着、クリーニングのプロセスで画像を形成します。画像形成に重要なこのそれぞれのプロセスは、いずれも複合的かつ複雑な現象で、計算による予測は今まで困難でした。
キヤノンでは電子写真プロセスのシミュレーション技術を独自に開発し、新たな技術の研究や新製品開発の効率化につなげています。
複合機における転写プロセスのシミュレーション例
プリントヘッドのシミュレーション
インクジェットプリンターのプリントヘッドの開発では、良好なインク液滴吐出状態をつくるためにノズルの構造の設計がきわめて重要になります。キヤノンは、インク液滴の吐出現象を計算するシミュレーションプログラムを開発し、ノズルの構造と駆動条件から吐出詳細挙動を予測することに成功しています。ヘッドを試作する前に、ノズル構造と吐出状態の関係を把握することで、高性能のヘッドを短期間で開発することが可能となりました。
インク液滴吐出状態のシミュレーション例
エンコーダー
ナノスケールの動きまで正確に検出
エンコーダーは、対象物にスケール(目盛り)を取り付け、そのスケールをカウントして角度や移動距離を測定するセンサーです。キヤノンは、最先端の光計測技術を利用して、超精密・超高精度のエンコーダーを開発しています。
レーザーロータリーエンコーダー(LRE)
半導体レーザーを光源に、光の回折※15・干渉※16現象を利用して角度を検出します。独自のプリズム光学系を使用したことによって小型化を実現。産業用ロボットアームの角度調整や放送機器用カメラの雲台などに使われています。
レーザーロータリーエンコーダーの原理
- ※15 回折
光の特性の1つ。光は波の性質をもつので、物体にあたると物体の影の部分に回り込んでいく。その現象のこと。 - ※16 干渉
光の特性の1つ。光は波の性質をもつので、同じ位相の光と合わさると明るくなる。180度位相がずれている光と合わさると打ち消し合って暗くなる。その現象のこと。
マイクロリニアエンコーダー(MLE)
LEDを光源とした独自の反射回折干渉方式を利用したエンコーダーで、長寿命、超小型サイズを実現しています。最高分解能は1000分割器との併用で0.8nm※17。 半導体露光装置のステージ用センサー、ハードディスク検査器、半導体計測機器などに使われています。
マイクロリニアエンコーダーの原理図
- ※17 nm(ナノメートル):1nmは1mの10億分の1。
レーザードップラー速度計
速度ムラや回転ムラを非接触検出
レーザードップラー速度計は、アフォーカル光学系※18を通してレーザー光を照射し、移動・回転している対象物の速度を非接触で計測する装置です。
レーザー光をコリメーターレンズによって平行光にして回折格子で分割します。E/O周波数シフター(周波数をシフトさせる素子)によって周波数差のできた2つの光を測定物に照射し、その散乱光を集光レンズを通してフォトダイオードに取り込み、得られた光のビート信号(ドップラー周波数)から速度を測定します。静止状態から秒速-200~2000mm、-50~5000mmの速度の測定が可能です。プリンターや複合機の用紙搬送速度や速度ムラの検出、感光ドラムの回転ムラの検出、工作機械の駆動部の回転や送りムラの検出など、研究開発や生産現場で使われています。
レーザードップラー速度計
レーザードップラー速度計の原理図
- ※18 アフォーカル光学系
非焦点(焦点距離が無限大)の光学系であり、レンズに平行光が入射し、同じく平行光が射出する。望遠鏡やビームエキスパンダー(レーザー光のビーム径を広げるための光学モジュール)に使われる。
ガルバノスキャナー
高度なレーザー加工を実現
レーザー加工機は、ミラーを高速に駆動し、レーザー光の位置決めをして穴あけやカッティング、トリミングなどを行う装置です。
キヤノンの「ガルバノスキャナー※19」はレーザー加工機へ搭載する高精度レーザースキャナーで、独自のエンコーダー技術を採用。用途に応じて最適に制御するフルクローズドデジタルサーボ技術と組み合わせて、ミラーの角度位置を検出します。高度な位置決め精度、くり返し再現性、整定速度の高速化を同時に達成しているガルバノスキャナーは、レーザーVIAホール※20加工機や3次元造形機などに搭載されて、携帯電話などの高密度基板の加工や、フラットパネルディスプレイ(FPD)、太陽電池パネルの生産などに役立っています。
ガルバノスキャナー
ガルバノスキャナーを搭載したレーザーVIA ホール加工機の原理図
- ※19 ガルバノスキャナー
高感度電流計のガルバノメーターの機構を応用したスキャナー。ガルバノという名称は、イタリアの物理学者ルイージ・ガルヴァーニから。 - ※20 VIAホール
多層基板の各基板上につくられた回路の配線を接続するために開ける穴。VIAとは「~経由」の意味。
超小型レーザー干渉計
0.08nmの微小変位や振動を非接触検出
レーザー干渉計は、光反射面をもつ対象物の運動状態(変位や振動)をレーザー光を使用して、非接触で測定するセンサーです。キヤノンではマイケルソン干渉方式※21を採用した「マイクロレーザーインターフェロメーター」を開発し、0.08nmという超高分解能を達成しています。
この干渉計は、半導体レーザーの採用とキヤノン独自の光学設計で32(幅)×47(奥行)×19(高さ)mm、重さ約50gという小型化・軽量化を実現。各種機器組み込み時のスペース効率を大幅に向上させ、自動車用燃料噴射装置のピエゾ素子特性評価、半導体露光装置やEB(Electron Beam)描画装置のステージ位置決め、精密駆動機械の微振動解析などに使われています。
マイクロレーザーインターフェロメーター
- ※21 マイケルソン干渉方式
光源からの光を2つ以上に分割し、対象物からの反射光(測定光)と固定した反射面からの反射光(参照光)を再度合わせて干渉させる。
超音波モーター(USM)
超音波域振動でフォーカス/ズーム機構を駆動
USM(UltraSonic Motor)は、キヤノンが一眼レフカメラ用交換レンズのフォーカス駆動用としては世界で初めて実用化した、超音波振動で駆動するモーターです。
圧電セラミック素子によりステーターという弾性体にたわみを生じさせると、そのたわみ振動の超音波進行波が円周方向に進み、ステーター表面には楕円回転運動が生じます。それにより、ステーターと接触した回転体であるローターが、楕円回転運動との摩擦によって超音波進行波と逆方向に回転するしくみになっています。USMは高トルクで応答性が高く、優れた制御性をもっています。さらに、作動音がほとんどないことやレンズに搭載しやすい形状といった特長があり、EFレンズのフォーカス駆動用モーターとして理想的な特性を備えています。
キヤノンはEFレンズに最適なUSMを開発し、静かで素早いフォーカス駆動やフルタイムマニュアルフォーカスなど、EFレンズの特徴的な機能を可能にしています。また、コンパクトデジタルカメラのズームレンズに使用することで、素早いズーム駆動を実現しています。
リングUSM、マイクロUSM、マイクロUSM II(左から)
USMの動作原理
