液晶露光装置の搭載技術
大型液晶テレビに使用される液晶パネルは、大型ガラス基板に微細な画素回路を露光する技術でつくられます。キヤノンの液晶露光装置は、57型ワイドテレビの一括露光も可能。この装置のトップメーカーとなっています。

大型凹面ミラー
世界最大直径※1・高精度のミラーを製造
キヤノンの液晶露光装置は、投影光学系にミラーを用いた「ミラースキャン方式」を採用しています。ミラー投影光学系は、構成がシンプルで基板サイズの拡大に対応しやすい、広い露光領域を得られる、レンズのような色収差がなく像性能が劣化しないなどのメリットがあります。
液晶露光では数μm※2精度でパターン露光をしますが、投影ミラーも高精度のものが必要となります。特に凹面ミラーは、大画面を継ぎ目なくワンパスで露光できる露光幅を確保できる大口径であれば、格段に生産性が上がります。
キヤノンは、ミラーの超精密加工技術を活用、世界最大の直径1,514mm、表面加工精度0.015μmの第8世代※3超高精度凹面ミラーの開発に成功しています。この凹面ミラーにより、露光幅全域で3μmの解像力が得られています。
大口径・高精度の凹面ミラー(直径1,514mm)
- ※1 世界最大直径:2011年9月現在の半導体/液晶露光装置にて。
- ※2 μm(マイクロメートル):1μmは1mの100万分の1。
- ※3 第8世代
ガラス基板の大きさの変遷は、「世代」で表される。基板が大きいほど大画面化に対応でき、多面取りによって生産性も上がるので、急速に世代はアップしてきた。現在、量産での最先端は第8世代だが、すでに次世代も視野に入れて装置開発が進められている。
超大型ステージ
大型基板を秒速750mmで露光
キヤノンの最新式液晶露光装置は、9(幅)×11.6(奥行)×5.8(高さ)m、本体質量が100t、マスクと基板のステージの可動部はそれぞれ 1t および 4t もあるというキヤノン最大の製品です。
液晶基板サイズの大型化にともなって基板ステージも大型化して、可動部重量が増大していきます。重量増加はステージ性能の劣化につながるため、キヤノンは、比重が小さく剛性の強い材料を選定し、部品強度を保ちながら軽量化を図った超大型ステージを開発しています。
この基板ステージとマスクステージは、それぞれエアベアリング保持されていて、非接触リニアモーターで駆動します。比較的重量の軽いマスクステージが、重量の重い基板ステージを追いかけることで完全同期する「マスタースレーブ制御」となっています。基板ステージの駆動性能は、開始後0.5秒で秒速750mmに達し、停止位置に到達後0.2秒で完全停止ときわめて高精度。両ステージの位置制御、速度制御には、レーザー干渉計による位置計測技術が用いられています。
この超大型ステージの高い性能と高速な駆動により、55型ワイドパネルで毎時323枚の高スループットが達成されています。
第8世代ガラス基板サイズ対応の液晶露光装置
真空成膜形成技術(グループ会社の技術-キヤノンアネルバ株式会社)
大型パネルの成膜工程を支える
真空成膜※4形成技術は、真空中で薄膜を形成する技術で、液晶パネル製造では配線工程で「スパッタ成膜※5方式」が使われています。これは「スパッタリング現象」による成膜方法で、トランジスタの配線回路に使われるアルミニウムやモリブデンなどの金属類の薄膜をガラス基板に形成します。
キヤノンアネルバは創業以来、独自の超高真空技術を培い、半導体やストレージデバイス、パネルデバイスの成膜装置を製造してきました。液晶パネルの製造では、ガラス基板の世代アップに合わせて「アネルバ方式」と呼ばれる基板の縦型搬送システムを開発し、従来の水平搬送による基板のたわみや装置設置面積の問題を解決しました。また、スパッタリングを構成するカソード部も独自の「矩形分割カソード」を開発し、同一の真空室内で3種の膜原料(ターゲット)を連続に、基板2枚に同時成膜できるしくみにしています。形成される膜は、均一な優れた膜質で、ターゲット利用率も向上しています。
この装置は、急成長する液晶パネル製造現場で、パネルコストの低減と生産性向上を同時に達成しています。
LCD用スパッタリング装置(DL3100シリーズ)
- ※4 真空成膜
通常、物質表面に薄膜(厚さ1μm以下)を形成するには、「メッキ」または「真空成膜」で行う。真空中で行う真空成膜は、膜厚コントロールがしやすい。真空成膜法には、原料を熱して蒸着させる「真空蒸着」、気体原料の化学反応を利用する「CVD」、物理反応を利用する「スパッタ」がある。 - ※5 スパッタ成膜
不活性ガス(Ar:アルゴンなど)が含まれる真空中のガラス基板と膜原料(ターゲット)に電圧をかけると、Arがイオン化(Ar+)してターゲットに向かって高速移動して衝突し、ターゲットを構成する原子や分子がはじき出される(スパッタリング現象)。はじき出た原子や分子が基板上に付着し、薄膜が形成される。