インクジェットプリンターの搭載技術
手軽に高品位の写真プリントができるインクジェットプリンターは、インクやヘッドをはじめとする精密技術の集大成です。キヤノンの技術の総合力が、その描写力をさらに高みへと導いています。

FINE(Full-photolithography Inkjet Nozzle Engineering)
微細なインク滴をコントロール
キヤノンは、インクジェットプリンターの基本メカニズムを発明後、新発想を加えながら独自技術を育ててきました。その基幹技術が「FINE」です。FINEのインク吐出メカニズムとプリントヘッド製造技術により、印刷品質の画質、階調性、画像安定性が飛躍的に向上しています。
最小1pl※1のインク滴を正確に吐出するメカニズム
写真画質の実現には、インク滴の微細化や吐出の高精度化が不可欠です。しかし、従来方式ではインク滴を微細化すればするほどプリントヘッドの移動による気流の乱れや、温度変化によるインク粘度変化の影響で、吐出量や着弾位置にばらつきがありました。
FINEのヘッドでは、一度の発泡でヒーターの直下にあるすべてのインクが吐出されるため、充填されたインク滴が効率よく押し出されます。インク滴の速度も従来の1.5倍以上と高速化され、ヘッドの移動による気流の影響も小さくなり、着弾精度が向上しました。
FINEの吐出方式
- ※1 pl(ピコリットル):1plは1リットルの1兆分の1。
ナノ精度の半導体露光装置を用いたヘッド製造技術
インク滴の微細化とプリントの高速化には、より多くのノズルをより広い範囲にわたって高精度につくり込む技術が必要です。FINEのプリントヘッドは、約20×16mmという親指の先ほどのチップに6,000個以上のノズルを並べることができます。これは、キヤノンが得意とする半導体製造技術や独自の材料技術、斬新なプロセス技術を駆使して、ヒーターやノズルをウエハーに一体形成することで作られています。
プリントヘッド部およびノズルの拡大図
PgR(Pigment Reaction)技術
普通紙で美しいプリントを実現
インクのにじみやすい普通紙で、印刷物やポスターのようにきれいなプリントができる技術が「PgR」技術です。この技術は、新開発の「クリアインク」を普通紙にコーティング後、顔料インク※2「LUCIA」で印刷することで、普通紙への高品位なプリントを可能にしたシステムです。
クリアインクは多価金属イオンを含む透明インクで、顔料インクの顔料成分と反応、紙表面で顔料を定着させます。キヤノンは、PgR技術の確立にあたり、インク材料の綿密な検討と微量のクリアインクをむらなく均一に塗るためのローラーなどのメカ機構を新しく開発しました。
PgR技術のインク定着プロセス
- ※2 顔料インク
構成要素の1つである色素が非常に微細な粒子として分散しているインク。耐候性に優れている。
ChromaLife100+
写真を美しく長持ちさせる
キヤノンは、純正染料インク※3と純正写真用紙の組み合わせにより、アルバム保存300年以上、耐光性約40年、耐ガス性はオゾンガスで約10年、混合ガスで約20年という長期間※4にわたって写真を美しく保存できるシステム「ChromaLife100+」を開発しました。
インクジェットプリンターのインクは、熱安定性、微細な形状(1plの正しい球状)の保持、安全性など多くの性能が同時に求められます。色の特性として、発色の美しさ、インク濃度の高さ、色あせしにくいという点も重要になります。インクの染料構造の変更と写真用紙のインク受容層に添加した堅牢性向上剤により、耐ガス性や耐光性が従来より大幅に向上しました。また、レッド領域の色再現性が拡大し、さらに豊かで鮮やかな色を長期保存できます。
- ※3 染料インク
構成要素の1つである色素が分子レベルで溶けているインク。写真との相性がよい。 - ※4 アルバム保存300年以上、耐光性約40年、耐ガス性約10年(オゾンガス)/約20年(混合ガス)
キヤノンが加速試験によりシミュレーションしたものであり、保証値ではない。評価方法および判断基準は次の通り。 - アルバム保存性、耐光性、耐ガス性(オゾンガス)は、社団法人電子情報技術産業協会発行のデジタルカラー写真プリント画像保存性評価方法(JEITA CP-3901)の屋内耐熱性、屋内耐光性、屋内耐オゾン性および寿命判断基準に準じてキヤノンが算出した予測値である。
なお耐ガス性(混合ガス)は、温度:24℃、湿度60%の一定条件下で、ガス混合比率を屋内環境の実測平均値(O3:NOx:SOx=3:19:1)と同じ設定にし、濃度100倍で加速試験を実施。
【寿命判断基準】
ドライバーの各用紙のデフォルト設定でプリントしたBK、C、M、Y各色の単色/反射OD値が1.0および0.6で、OD値が20~35%(各色単位で設定)低下した時点。プロセスBK中のY、M、C各成分(各構成色)の褪色濃度差が12~18%以上ずれた時点。(Wilhelm Imaging Research, INCの画像寿命判断基準:WIR v3.0 Endpoint Criteria Setに準拠)
用紙とインクの組合せは、いずれも「キヤノン写真用紙・光沢ゴールド」と「BCI-321」「BC-311」(耐光性約40年はBCI-321のみ)において実現。
自動写真補正II
エリア別明るさ補正により、さらに高品位な写真補正を実現
自動写真補正技術は、写真を自動で解析・分類し、的確な補正を行う技術です。人物の顔を検出(顔検出)した後、画像の特徴量を解析して撮影シーンを推定(シーン分類)します。次に顔検出とシーン分類の結果に基づき、補正を実施します。顔検出には従来よりさらに高度化した顔検出技術、シーン分類には膨大な画像データベースから特徴量を解析した結果を利用してシーンを分類する画像解析技術が活用されています。
この技術によって、ポートレートは人が好ましいと感じる顔色や明るさに、風景写真は鮮やかで印象的に、顔と風景の両方が写っているスナップは自然な肌色とメリハリのある風景を両立した写真に、自動で仕上げることができます。また、露出が不足している部分を特定し、エリア別に異なる明るさの補正を行うこともできます。
自動写真補正II のプロセス
- ※5 補正効果の適正化
具体的な補正には、エリア別明るさ補正、色かぶり補正、露出補正、顔色補正、顔明るさ(逆光)補正などがある。これにシーン分類結果による「シーン別適正化」(トーン調整、彩度アップ)、場所によって補正レベルを変える「特定色強調」などを行い、自動写真補正II のプロセス写真全体をほどよく補正していく。